(2024年12月5日加筆)

2024年に入って、ハワイのコンドミニアムではマスター保険料が急騰しており、最大400%の値上がおこなわれたケースもあります。コンドミニアム(日本でいうマンション)は建物や共有部分は管理組合に管理責任があり、火災、水害などの場合、躯体の修理、建て直しは管理組合がおこないます。この共用部分に適用される保険がマスター保険です。一般からは見えにくいですが、コンドミニアムの共益費のおよそ3割は保険代といわれています。

今年に入って、マスター保険料の急騰に起因する、特別賦課金の徴収や、月々の管理費の大幅な値上げが生じているコンドミニアムが数多く見受けられます。この状況は「コンド保険危機」と広く呼ばれており、オーナーだけでなく、不動産購入やローン審査にも影響を及ぼしています。コンドミニアムのマスター保険が不十分である場合には、買主が融資を受けることが難しくなり、しいては不動産価値の低下を招きかねません。また、今年になり、これまで12か月分割払いだった保険料を保険会社が先払いを義務付けるようになりました。保険料が倍以上になり、さらに先払いを強いられた場合コンドは次のような対策を取ることで対処していますが、各オーナーにとっての負担は小さくありません。
1)長期修繕の準備金が十分にあれば、そこから一時金として保険代を一括で払う。ただし、その結果長期修繕準備金が不足した場合には、銀行の融資が降りなくなるので、多くのコンドミニアムはこの方策は取れません。

2)特別賦課金:最大各戸2万ドルから3万ドルという数字も聞いています。コンドミニアムの財政状況、またユニット数に依存します。

3)銀行から融資を受けて前払いの保険料を支払い、その後共益費を値上げして、融資返済に充てる

4)マスター保険の内容を変更し、各オーナーがそれぞれ火災保険に加入する。これは戸建て風のコンドミニアムの場合にのみ取れる方策です。

2024年12月時点では、まだ多くのコンドミニアムがこの状況に対応中です。

コンドミニアム保険危機の原因とは?

自然災害と再保険コストの上昇: 近年、世界中で山火事、洪水、ハリケーンなどの自然災害が増加しており、これらの出来事が大きな経済損失をもたらしています。1980年~2023年に米国で起きた10億ドル以上の大規模災害頻度は、年間平均8.5件でした。しかし最近5年では年間平均20.4件と急増しており、特にこの2年間では46件の大規模災害が起き、2710億ドルの損害を出したのです。このため、保険会社にヘッジを提供する再保険会社が、リスクの増加をカバーするために料金を引き上げており、その影響が最終的にはハワイの保険契約者にまで及んでいるという訳です。昨年のラハイナの火事も記憶に新しいと思います。

ハワイの特有の課題: ハワイはハリケーンに対する脆弱性や、海岸近くの古い建物の多さなどの理由から、特に保険会社にとって魅力的ではありません。そのため、保険会社はより選別的になり、高額で補償内容の少ない保険を提供することが多くなっています。

保険の選択肢が限られている: ハワイでコンドミニアムに保険を提供する保険会社は限られており、また、新規ビジネスを引き受けていません。この競争の欠如がコストの上昇とコンドミニアム協会が求める保険の選択肢の減少を招いています。

市場を安定させるための知事の対応

ジョシュ・グリーン知事はハワイのコンドミニアム保険市場を安定させるための緊急事態宣言を発表しました。この宣言により、以下の措置が可能となりました。

  • 州の資金を使用して、より手頃な保険を提供するための支援を行うこと。
  • 新しい保険契約の発行を迅速化し、利用可能なカバー範囲を拡大するために特定の規制を緩和すること。
  • ハワイハリケーン救済基金およびハワイ物件保険協会を巻き込み、コンドミニアム協会に対して直接総合保険を発行すること。

コンドミニアムオーナーへの影響

これらの措置により、州はコンドミニアム協会およびオーナーに対して保険をよりアクセスしやすく、手頃な保険料で提供することを目指すとしています。しかし、今後数ヶ月でこれらの変化がどのように補償内容や掛け金に影響するかについては現時点では不透明であり、2024年12月時点では、まだ混乱は収まっていません。

まだ終わりは見えませんが、今後も情報をお届けします