
ハワイの5月は、「レイの季節」でもあります。
毎年5月になると、母の日の前あたりから島中から花が静かに消えていき、卒業式そして、メモリアルディでピークを迎えます。目にする花の量と反比例して、レイを目にする頻度が高まるのが5月。
オーキッドの値段も上昇。周囲の花まで少なく感じられるほどです。そして、経験豊富なレイメーカーたちは一気に忙しくなり、各々の「秘密の花摘みスポット」の花が消えていくのです。
プルメリアは日持ちしないので、あまりレイに使われない傾向がありますが、こちらも良い花はみんな誰かが摘んでしまいます。ケアウホウに降りていく道路沿いのプルメリアを採っている姿に出くわすこともしばしば。
我々もそうでしたが、初めてハワイの卒業式に参加すると、かなりカルチャーショックを受けます。
これぞ「ザ・ハワイ」という体験なので、機会があればぜひ一度参加してみることをおすすめします。その意味では、この島で生まれ育った娘たちに感謝です。
写真では皆さん見ていると思いますが、卒業生たちは、花のレイ、ティーリーフ、リボンレイ、キャンディレイ、マネーレイ、ククイナッツレイなどなどに何重にも包まれ、最後には顔が見えなくなるほど。そこに家族や友人たちからのハグが加わり、それはそれは不思議に充実した時間が流れます。

ハワイに25年暮らして感じるのは、レイは単なる花の首飾りではない、ということ。
アロハスピリットを最も純粋な形で表現しているのが、レイ。
正直に言えば、自分も、まだ学んでいる最中なので、偉そうなことは全く言えませんが。。。。
次女の高校卒業式に向けてレイを作り、改めてこの文化の奥深さを実感したので、シェアしている次第です。
初めて体験した「ハワイの卒業式」
本当の意味でのレイ文化を知ったのは、7年前、長女がコナのケアラケヘ高校を卒業した時でしょう。
ハワイで生まれ育っていない我々にとって、レイは「大事なもの」という理解はありましたが、あまり深く考えたことがありませんでした。お恥ずかしながら。良い香りがする、素敵なプレゼント的な位置づけでした。
7年前、怖いもの知らずの母を中心に、自分たちでシンプルなプルメリアレイを作り、「なかなか上手くできた」と思っていたのですが…
今振り返ると、全然でした(笑)。
今年は一念発起し、友人のバーバラにレイづくりの指導を乞いました。彼女は、ハワイの著名なクム(レイ作りの師匠)のもとで修行中。その情熱と知識は半端ではありません。
レイ作りは「花を糸に通すだけ」ではない
レイ作りは、単純に花を糸に通す作業なんですが、実は奥が深い。
技術。タイミング。下準備。伝統。
そして、教わらなければ絶対に気づかない細かな工夫があります。

今年学んだ大切なことのひとつ。
「花をケチってはいけない」
一般的なレイは約90センチ(36インチ)ほどですが、実際には驚くほど大量の花を使います。卒業式は特に多くのレイをかけるので、長めのレイが必要。
時間が経つと花は自然に縮むため、花数が少ないと隙間から糸がてしまうのです。
これは、7年前に痛感した失敗でした。あと、花を少し細工して、綺麗にレイが見えるようにもします。

本当に美しいレイは、たっぷりとしていて、豊かで、生きているような存在感があります。ハワイの手作りレイが50ドル〜80ドル以上するのは当然のことなのだと、実感。
見えない部分にある、レイ作りの世界
準備作業も実は非常に重要。そして、大変。
まず、花を集めること自体が大変なのは、誰にでも分かります。
ハワイの気候では、花はすぐに茶色く変色したり、しおれたりします。タイミングが少しずれるだけで、花が咲いていないことも普通です。

経験豊富なレイメーカーは、私たちが見過ごしてしまう花にも気づきます。
- どこで摘むか
- いつ摘むか
- どう準備するか
その知識は、まるで漁師の「秘密の釣り場」のように大切にされています。花屋から花を買うことはほぼないそうですし、レイに使うような花を扱っている花屋もないそうです。まさに自然に寄り添う作業。
そして今年初めて知ったのが、「花を洗う」という工程。花についた土や花粉、樹液を丁寧に洗い流し、定期的に霧吹きで水分を与えていました。
花を洗う???
しかし、完成した花は明らかに違いましたよ。
より鮮やかで、みずみずしく、生命感があるのです。
我が家では、変色を防ぐためにバナナを洗いますが、その作業に少し似ているのかもしれません。酵素を落とすという。

さらに、レイ用の針にも「良し悪し」があるのです。ゴルフのパターの違いのように。。。ローカルショップでも買えますが、バーバラが使っていた仕様の針はまったく別物で使いやすかった。
どんな世界にも、経験者だけが知る「小さなコツ」があるものですね。
そして、花は冷蔵保存が必須。
卒業式で20本以上レイを作る場合、タイミング管理は非常に重要になります。1週間かけて少しずつ作ることはできませんから。
卒業直前の2日間に、一気に作業が集中します。かなり根気がいる作業です。
キャンディレイと、ハワイらしい自由さ
一方娘は、学校カラーのリボンレイやキャンディレイを作っていました。若い世代には、花のレイ以上にキャンディレイの人気が高いです。

正直、高校生だったら、私も花よりキャンディを選んでいたかも。笑
大切なのは、「心がこもっていること」。
ハワイ島のローカル高校の卒業式は、フォーマルな式典というより、巨大なコミュニティイベントに近い雰囲気があります。
家族は大量のレイを抱えて集まり、人混みの中で卒業生を探し、至る所でハグと写真撮影。
そして最後には、卒業生たちはレイに埋もれて見えなくなります。


まさに、幸せなカオス。
それこそがハワイ。
レイは「その瞬間」を贈るもの
今年、レイの良さについてもうひとつ感じたことがあります。
レイは、「儚いもの」です。
花はすぐにしおれ、香りは消え、翌日には美しさの多くが失われます。
でも、だからこそ意味があるのだと思います。レイは永遠に飾っておくための物ではありません(うちでは記念のレイを乾燥させてとっていますが)。

ある特別な瞬間を祝福するために存在しています。
レイを作り、渡し、受け取る。
非常にシンプルな時間の中で、人と人が気持ちを共有するのが良いのでしょう。
それは、プレゼントを渡すのとは、少し違う感覚です。

年齢を重ねるほど、その価値が染みます。
だからこそ、今でもレイ文化はハワイで大切にされ続けているのでしょう。
アロハとは、「思いやり」「手間」「その場にいること」、そして「人とのつながり」。
今年、何時間もかけてレイを作りながら、ハワイの文化がなぜここまでレイを大切にするのか、少し分かった気がします。
レイは、ただ花をつないだ首飾りではないのです。
