2025年 UHNW不動産インサイト:超富裕層レジデンスは “住まい” から “世界戦略” へ
世界の上位0.1%は、もはや家を「買う」のではなく、住居ポートフォリオを構築しています。為替変動、気候レジリエンス、モビリティビザ、さらにはフィランソロピー(社会貢献活動)環境まで―超富裕層(UHNW)が注目する場所を左右する要素は多岐にわたります。ちなみに超富裕層とはネット資産額が3000万ドル(45億円以上)を指しています。
私が所属しているグローバルな不動産グループ、REALMは、Altrata(ウェルスX)と3年連続でタッグを組み、この動きを読み解いてきました。最新版「2025 Residential Real Estate Intelligence Brief」は、175か国・400万件超のUHNWプロファイルをビッグデータに、我々の現場の知識を重ね合わせたものです。
グローバル・パワーマップ
「UHNW居住者数 世界トップ20都市」
依然としてニューヨークがUHNWの中心地の役割を果たしています。3万3,000人超の超富裕層が暮らし、2位ロサンゼルスにの約1.6倍の規模です。香港、マイアミ、ロンドンがトップ5に入り、トップ20都市のうち15を米国の都市が占めています。
ポイント
米国不動産は依然として世界の資産防衛の要。ドル建て資産+透明な法制度は、多くの新興市場が提供できない「確実性」をもたらします。
アメリカのセカンドホーム拠点
「UHNWセカンドホーム所有数 米国トップ10都市」
マイアミが1万3,000人超で首位。マイアミのUHNW居住者の約75%がセカンドホーム(別荘)目的です。そして、注目はフロリダのネイプルズ(フロリダ)。今回5位にランクイン。高校の卒業旅行で楽しませてもらった街です。UHNWオーナーの95%が別荘利用。ライフスタイル優先の資本流入の象徴です。
ポイント
温暖な気候・税優遇・プライベートジェット対応―いわゆる「フロリダモデル」が、米国内ではライフスタイル型移住の雛形になっています。
グローバル・セカンドホーム拠点
「UHNWセカンドホーム所有数 米国外トップ10都市」
ロンドンが9,000人超でトップ。ジュネーブ、ドバイ、シンガポールが急伸―居住ビザ、低税率、グローバル・アクセスが鍵です。
ポイント
UHNWは3大陸に拠点を張り巡らせる傾向が強くなっています。①ビジネス拠点、②税最適化拠点、③ライフスタイル拠点を組み合わせ、リスク分散とライフスタイルを両立するポートフォリオを構築しています。
富の「密度」が示すもの
「UHNW人口密度 米国主要都市」
「UHNW人口密度 米国外主要都市」
モナコは22人に1人がUHNW。まさに「住める富裕層クラブ国家」。米国ではアスペンが77人に1人でトップ、慈善活動とアウトドアライフのミックスが重要なポイントです。
ポイント
密度はチャンスを増幅します。モナコのマリーナ。アスペンのアフタースキー。隣人が投資家・取締役・慈善仲間になる可能性があるのです。
ポートフォリオ戦略
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三大陸分散化
米国の一次拠点(NY・LA)、欧州/中東の拠点(ロンドン・ドバイ)、太平洋リムを組み合わせ、政策・税変動をヘッジ。 -
気候ヘッジ
気候・水資源は、今や延床面積より重要視されます。暮らしやすく、安全な気候帯を持つ地域がランキング上位に。 -
モビリティビザ&租税条約
ポルトガルのゴールデンビザやUAEの10年居住権を米国不動産と組み合わせ、国境を越えた可動性を確保。 -
慈善活動視点の立地選定
アスペンが示す通り、使命感を共有するコミュニティは同質のUHNWを呼び込むようです。文化・環境プロジェクトが盛んな地域も同様の相互作用を生んでいます。 -
レガシー・ストラクチャリング
多世代間信託はポートフォリオに「トロフィー不動産」を組み込み、安定を図っています。クラブ会員権など譲渡可能な特権付き資産は後継者価値を倍増。
「ビッグアイランド・ハワイ島」が示す存在感
ハワイ島コナコーストは十数年に渡りハワイ州の超高額帯(1,000万ドル超)取引の首位を牽引し、
クキオ、フアラライ、コハナイキといったプライベートリゾートは、大きく成長しました。
戦略ドライバー | コナの優位性 |
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気候レジリエンス | 300日以上の晴天。ハリケーンから守られたマイクロ気候帯。 |
空間とプライバシー | 広めの敷地、超低密度。 |
タイムゾーン利便性 | 米国西海岸とアジアに近い距離 |
同質コミュニティ | フォーチュン500創業者や次世代テックリーダーが既に定着。 |
米国法制の確実性、気候安全性、ハイエンドなライフスタイル、そしてエリートネットワーク。
ビッグアイランドは全て満たしています。
こうしてみると、超富裕層は場所を極めて意図的に選んでいます。2025 REALM × Altrataレポートによれば:
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資本は“確実性”を追う(法・気候・文化)。
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コミュニティは価値を倍増させる。
全文レポートはこちらからどうぞ(英語のみです)。